長編小説 「愛と誠」(職員室編)

第17話 ちょっぴりムカつくわ

柏田に厳しい言葉を浴びせられた愛は、自分の席から動くことができず、じっと考え込んでいた。
誠が職員室に戻って来たのは、その状態が15分程続いた頃だっただろうか。
すぐにその異変に気づいて、愛のもとに駆け寄ろうとした。
その時、誠の行く手を阻むものがいた。

「待ちたまえ」
「えっ。あ、岩島津さん。何ですか?」
「今、君が女王の所に行っても、何の役にも立たないばかりか、女王を苦しめるだけだ。」
「・・・。」
「台場くん、そもそも女王をこの状況に追い込んだのは、君にも責任があるんじゃないか?
そんな君から慰めの言葉をかけられたところで、嬉しいと思うかね?」
「・・・たしかに、そう言われればその通りです。でも、あのままじゃ愛さんが・・・。
放っとけって言うんですか?」
「放っとけなんて言っていない。君は思った以上に『わからんちん』のようだな。
生徒と同レベルだ」
「あの〜、お言葉を返すようですが、岩島津さんてムカつきますね。
正解を知ってるなら、さっさと教えてくれたらいいのに、偉そうにしてるだけじゃないですか。
どうせオレは生徒レベルですけどね。だから、岩島津さんが生徒から嫌われる理由も、
すご〜くよくわかります」
「ふふふ。そういうセリフは、日常的に耳にしているから、私は何とも思わないよ。
いいだろう、アドバイスをくれてやる。簡単なことさ。
勝てば官軍という言葉くらい知っているだろう?
愛称公募を生徒会で始めてしまったことは、もう今さら戻せない。
いや、ここで引き返せば、かえって自らの失敗を認めたことになる。
だったら、このままやり切って、満足の行く結果を出してしまえばいいじゃないか。」

誠は少し考えると、険しかった表情が、笑顔に戻っていった。
「岩島津さん、ありがとうございます。言い方はムカツクけど、
おっしゃってることは正しいですね。ははは・・・」
「ふふふ。言ったはずだ。気持ちだけで女王を守ることはできないとね。
必要なのは行動だ。君は自分の身を盾にして、女王を守ろうという覚悟はあるか?」
「そんなのは、聞くまでもないっす!オレは火の中、水の中ですよ」
「ならば、愛称公募は、まず君が実験台になるんだ。君のプロフィールを全校生徒に知らせる。
公募でどんなのが出てきて、得票が多いのはどんな作品なのか、
そういったデータを職員会議に出して、女王のアイデアが実現可能であることを示すんだ。」
「わかりました。オレ頑張りますよ。」
「念のため言うが、女王には悟られないことだ。
女王にとって今の君は、邪魔者でしかない。
動きを勘づかれたら封じられてしまう。
陰ながら健闘を祈ってるよ。
私は愛称委員会のメンバーという立場で、サポートさせてもらう」
誠は職員室を出て、再び生徒会室へと向かった。

岩島津は、誠が確かに出て行ったのを確認してから、愛の近くに移動した。
「愛さん、この岩島津も愛称委員会の1人だ。柏田が何と言おうと、
委員会を勝手に無くすようなことはさせない。一緒に戦おう!
それから台場誠についても、余計なことをしないよう僕が監視することにする」
「ありがとう。今私が頼れるのは、岩島津さんしかいないわ」
「もう忘れてしまったのかね? 言ったはずだ。君は僕が守るとね」
「ふふふ。岩島津さんは頼りになるけど、その言い方、ちょっぴりムカつくわ」
「ふふふ。よくそう言われる」
(続く)

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